戸塚パルソ通信@メール 第105号
戸塚宿を行く(歴史探訪)
コラム
浮世絵に描かれた「お札まき」八坂神社のお札まき異聞
国立国会図書館蔵
●双筆五十三次 加奈川
この奇妙な浮世絵は、広重と豊国の合作(双筆)による東海道五十三次の図のうちの加奈川。
団子をかじる中間が島田髷を結っており、それを、駕籠にお茶を出しに来た茶店の娘が驚いて見上げているもの。
この中間は、戸塚のお札まきからの帰りで、女装した(させられた)ままなのだとか。
島田髷をしたまま東海道を往復しているとしたら、かなり恥ずかしい。ある考察ではお札まきに参加して、そこでカツラをつけたまま帰ってきたともいうが、この時代、島田髷のカツラなど存在したのだろうか?存在したとしてもかなり高価だったと思うので(この時代に人工毛髪はない)、勝手に持ち去られたとしたら、あとで騒ぎになったような気がする。
場所が戸塚ではなく加奈川(神奈川)とされているから、この現場は神奈川宿である。保土ヶ谷も超えて、彼らはどこまで帰るのだろう。駕籠の乗客は、この中間の主人なのだろうか。
中間がかじる団子は、この茶屋で商われたものであろうか。あるいは、名所「焼餅坂(団子坂)」を越えてきたことを表しているのかもしれない。
この絵は安政年間の作品で、人物画が得意の豊国と、風景画で大ブレイクした広重のコラボ企画である。そんな人気アーティストのコラボで、他の宿場のモチーフにまでなる、お札まきの人気のほどが知れる一枚である。
●神奈川宿